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連載小説『ディアーナの罠』

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名前 MUTUMI
題名 180
内容 「……君は」
 何か言いたそうなロンを、一矢は視線で制した。その先の言葉を無理矢理飲み込まされ、それ以上の会話を遮断される。高位能力者か?という問いは、とうとう最後迄ロンの口から発せられる事はなかった。
 裕斗とシェリーの指摘以外、他には何も出なかったので、後は細々とした現状報告に移り、それも大した物でもなかったのだが……、現時点でのお互いの動きを表明しあい、最初のコンタクトはお開きとなった。
 一矢とボブは星間中央警察の指揮所に留まり、部隊の指揮をとることになる。
 歩み寄れないはずの二つの組織は、こうして同じ船に乗り込む事となった。同じ目的を共有する者として、彼らは互いに手を取りあう。……しかしそこにはまだ信頼はなかった。
[212] 2006/10/15/(Sun) 20:00:10

名前 MUTUMI
題名 179
内容 「普通の人間があれに勝てるかよ。高位の能力者でも油断をするとコレだぞ」
 そう言って一矢は自分の首を、人指し指で斬る真似をした。
「背中を見せて逃げても、誰も非難はしないさ」
 現実はかくも厳しい。ボブは確かに訓練を受けている分だけ、一般人よりはましな対応をできるだろう。だがそれでも、……その程度なのだ。狙われて、戦って、勝てる見込みは低い。能力者でもないボブが、無事でいられるはずがない。
「時間稼ぎは……」
「無理だって」
 溜め息混じりに、一矢がボブを止める。
「止めとけ。真面目に、本気で、マジに止めてくれ。今更殉職での副官交代は嫌だぞ」
「……そうですか」
 苦笑混じりにボブは呟き、わかったかな?という表情で捜査官達を見渡した。
 桜花部隊の副官ですら逃げろと忠告される現実を、捜査官達の頭に叩き込むためになされた会話は、その目的を達したようだ。それとわかって、全員が今更ながらに青くなっている。
「それ程危険なのか……」
 ヒューズは絶句し唇を噛む。
「リュカーンは、兵器。それを頭の中に入れておいて下さい」
「わかった」
 ロンが皆を代表して頷く。
「リュカーンが敵だと確定した場合、僕が現場に出ます」
「え?」
「君が?」
 驚きの声を黙殺し、一矢は生真面目に続ける。
「相手が出来るのは僕ぐらいですから」
[211] 2006/10/13/(Fri) 20:57:50

名前 MUTUMI
題名 178
内容 「そう言われるのはもっともなんですけど……」
 言葉を濁し、一矢は困った顔をして捜査官達を見渡す。
「あなた達では捕まえるのは無理ですよ」
「なっ!」
「くっ……」
 その場に居たボブを除く全員の顔が歪んだ。
「そんなことはない!」
「俺達だって!」
 一矢に向かって叫ぶ捜査官達を、何故かボブが制した。
「静かに」
「!?」
「……?」
 割り込んで来たボブに全員の視線が向かう。それを確認し、ボブは肩を竦めながらも尋ねた。
「桜花、仮定の話です。もし俺がリュカーンと相対することがあったら、俺はどうしたらいいですか?」
 ボブの視線は真直ぐに一矢に向かっている。一矢は今更何を言っているんだという怪訝な顔をしながらも、いつもの言葉を告げた。
「死ぬ気で逃げろ」
「了解です。……しかし、やっぱりまだ勝てませんかね?」
「無理。秒殺されるのがオチ」
「そうですか」
 
[210] 2006/10/09/(Mon) 22:35:22

名前 MUTUMI
題名 177
内容  静かな口調で一矢は続ける。
「皆さんがどこ迄知っているのかは知りませんが、リュカーンは本当に恐ろしい存在なんです。僕ですら相手をするのは、骨が折れるんですから。捕まえようなんて思わないことです」
「え!? けどさ!」
 反論しようとする裕斗をロンが制した。裕斗の代わりに、今度はヒューズが身を乗り出す。
「容疑者を捕まえずに、俺達に何をしろと?」
 ムッとした口調でヒューズが問う。
[209] 2006/10/06/(Fri) 00:36:13

名前 MUTUMI
題名 176
内容 (と、取り敢えず、対策! うちの奴等つけとこう!)
 決意すると善は急げとばかり、一矢はロンに提案を持ちかけた。
「あのう、今回連れて来たメンバーの中に能力者が何人かいるんですけど、そちらの捜査官達に付けて構いませんか?」
「?」
 急な話に、ロンが些か戸惑った顔をする。合同捜査なのだから、行動を共にする事は前提として確定しているのに、今更何をと、思っているようだ。
「構わないが、急にどうかしたのかね?」
「いえ、単なる危険回避です」
 一矢の発言に、ボブ以外の全員が首を傾げた。一矢の横でボブがやれやれと吐息を吐き出す。
「桜花、それでは通じませんよ」
 一矢がなぜ能力者云々と言い出したのか、大体想像のついたボブが、一矢に向かって囁く。
「言っておく方がいいです。覚悟はさせておくべきです」
「えっと?」
 ボブの囁きが聞こえたのだろうか、シェリーが不安気な表情をして一矢を見つめた。一矢はボブにちらりと視線を走らせた後、重い口を開く。
「……先程、身体能力の話が出ましたよね?」
「ええ」
「可能性の話ですが、強化人間、或いは能力者かも知れません」
「!」
 ビクンと捜査官達全員の肩が揺れた。
「あり得なくはないんです。昔出会ったギルガッソーのメンバーには、高位能力者もいましたから」
「マジで?」
 裕斗がポカンと口を開ける。
「ええ」
 一矢はしっかりと、一つ大きく頷いた。
「下手をするともっとやばい存在、リュカーンかも知れません」
 全員が苦虫を噛んだような、何とも言えない顔をする。
「それは……」
「確定ではありません。可能性の話です。でも、対策はしておいた方がいいと思うんです」
[208] 2006/09/24/(Sun) 20:23:35

名前 MUTUMI
題名 175
内容 (敵はギルガッソーだし……。いや、待て! もしかしたらここにはいないだけで、捜査官達の中にいる可能性も……)
 限りなく薄いとは感じつつ、念のためロンに確認を取る。
「あの、話は変わりますけど、そちらのメンバーに能力者とか……います?」
 いると言ってくれという一矢の心の叫びとは裏腹に、ロンはあっさりと首を横に振った。
「いや、いないが」
「……ソウデスカ」
 微妙に視線が泳いだ。
(うわぁぁ、やっぱりいないのかよ! 絶対やばい! このままだと、敵に手玉に取られて、ポイだぞ!)
 色んな意味で、能力者がいかに便利かつ常識外なのかを一矢は知っている。味方に一人いれば、万人力に相当する事も。
[207] 2006/09/23/(Sat) 22:37:27

名前 MUTUMI
題名 174
内容  だから今も、リュカーンの脳内には、コントロール装置が残っている。取り出す事が出来たのは、極一部の協力者を得た者のみだ。ある意味それは、幸運な者と言えよう。
(自我のあるなしに関わらず、リュカーンが相手だと物凄くやり難いんだよなぁ。あいつら人間離れし過ぎだって)
 吐息をつきつつ、一矢は星間中央警察のメンバーを見回した。
 ざっと見る限りどう見ても、彼ら全員、一般的な肉体でしかない。どこかに機械が混じっていたり、強化されている様子すらなかった。
(う〜ん、全員真っ当な身体だ……。ということは、やっぱりあれか? 皆ノーマル? 能力者もいない?)
 一矢の環境からすればそれはあり得ないことだが、一矢がいる星間軍が特殊なだけで、一般社会ではそれが普通だ。
 強化人間や能力者は数が少ない。稀であり、珍獣扱いされても可笑しくない数だ。高位の能力者ともなると、稀少価値はその上に万桁程跳ね上がる。 
(全員ノーマルだとすると……。うわぁ、戦闘能力低過ぎ! ……いや別に、警察なんだからそれでも問題はないんだけど。でもなぁ、今回はまずいだろう!?)
[206] 2006/09/18/(Mon) 23:03:28

名前 MUTUMI
題名 173
内容  なぜ急に自我が芽生えたのか? この命題に答えを出せる者は、まだいない。
 生命工学者達が理由を捜し出すよりも先に、彼ら自我を持ったリュカーン達は、世界に対しささやかな要求を出した。自らの脳に埋め込まれたコントロール装置の撤去を、というものを。
 人であって人でない者を解き放つ、この行為に世論は割れた。星間戦争が終結し、星間連合が産まれ軌道に乗った今でも、世論はまだ割れている。イエス或いはノー、その答えはまだ出ていない。
[205] 2006/09/14/(Thu) 20:50:09

名前 MUTUMI
題名 172
内容  人間を模して作られた彼らは、人間以上の機能を擁するように設計された。
 初期のリュカーンは、クローン技術とサイボーグ技術を基礎として作られた為、限りなく脆弱な人間に近かった。ところが代を経るごとにその弱点は克服されてゆき、現在では人間とは異なった種とも呼べる物へと、変貌している。
 リュカーン自身には、生殖能力がない。男性体・女生体を問わず、精巣や卵巣といった生殖に関わる器官を持たない。彼らは自力では産まれない。リュカーンは、生産工場のカプセルの中から産まれるのだ。
 『タンパク質や金属を素に合成された人工物』、それがリュカーンに対する世間一般の認識だった。故に、彼らに人権は認められていなかった。幾ら人に似ていても彼らは人ではない、便利な作業物体だと、考えられていたのだ。
 まあ、それも無理はない。大多数のリュカーンは前頭葉の辺りに、コントロール基盤を持つ。外部からの入力で、容易く身体をコントロールされてしまうのだ。肉体の支配権は常に他者にあった。
 では精神はというと、これまた微妙な話になる。リュカーンにはそもそも自我と呼べるものがないのだ。初めからそういったものは強制的にブロックされている。
 そもそも頭蓋骨内にあるものが、人間の脳かどうも怪しい。それらしいものは確かに存在する。けれどそれは変質し過ぎている。手を加えられ過ぎているのだ。
 こういった事情から、リュカーンは人間として扱われることはなかった。そう、……ついこの間迄は。
 変化が起こったのは星間戦争でだ。物体扱いであった彼らが、自我を持ち出したのだ。勿論全てのリュカーンに起こった変化ではない。極一部のリュカーンにおいてのみの現象だったが、それでもそれは大変なインパクトを伴った。
 
[204] 2006/09/07/(Thu) 20:39:20

名前 MUTUMI
題名 171
内容  シェリーの発言を受けて一矢の中に幾つかの可能性が浮かぶ。
(一番可能性が高いのは薬物強化、次にサイボーグ(機械化)。その次が肉体系強化の能力者。まあ、このあたりのどれかに該当するんだろうけど……。最悪なのはリュカーンだった場合か。可能性は低いけど、あり得なくはないし)
 本当にリュカーンだったらどうしようと、一矢はちょっと憂鬱になった。
 リュカーンというのは、人間に似せて作られた人造生命の総称だ。人間とほぼ同じ構造をしているが、抜本的に素材が違う。
 見た目は確かに人間とそっくりなのだが、肌の感触も髪の質感も全く変わらなにのに、肉体を構成する物が違う。リュカーンは人間の様に脆弱ではない。
[203] 2006/08/26/(Sat) 22:08:12






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