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[5651] さらに教えて下さい 大雪 - 2011/10/20(木) 07:35 -

Sumitoさん、あたたかいお言葉ありがとうございます。グリベックが全く効かないことは無さそうだということを教えて頂き心が救われました。次回の診察の時は担当の先生へ書面で質問して後日回答をお願いする形で確認できるよう試みたいと思います。
 もう少し教えて下さい。腫瘍摘出の際の病理検査でKIT陽性(=グリベックの効果が期待できる)ということがわかっているのならば、この後、もしも遺伝子解析が出来たとすると、具体的にどのような役に立つものなのでしょうか? 自分自身あまりにわからなすぎて、担当医にどのような話を持ち出して良いのかわかりません。
 それから、経過観察の期間をおかず、即、服用を勧められたのは、それだけ深刻な状況で、すぐに再発する可能性が高いと判断されたということなのでしょうか。そうとは限らないものなのでしょうか。
 考えられることがあれば教えて頂けるとありがたいです。どうぞよろしくお願い致します。

[5652] GIST変異ゲノムタイプとグリベックの効果率 Sunny南加 - 2011/10/20(木) 10:39 -

大雪さん、
下は2011年03月03日にGnetにポストしたのをコッピーしました。Gnetには写真3枚付着できるので、図番号はそれを指しています。下はExon11の変異に付き書いたものです。次はExon9に付きポストしたのをコッピーします。

大雪さん、皆さんもGnetに登録しませんか?

ーーーー

私の古い腫瘍ブロックのゲノム結果を知り、LRGの J. Callさんにメールでゲノタイプに対してのグリベック治療効果のレポートを頼み、下を同日に紹介されました。それは

KIT mutations and dose selection for imatinib in patients with advanced gastrointestinal stromal tumors
Maria Debiec-Rychter, et al. Eur J Cancer. 2006 May;42(8):1093-103
ー KIT突然変異と進行したGIST患者のイマチニブ服用量選択 −

要約は下でみられますが、全文のサイトはペーストができません。(多分有料アクセスだからでしょうか。)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16624552

これはヨーロッパのEORTC phase III 治験で377人のGIST患者対称に3、5年間かけて行なわれたグリベック400mg、800mg効果を調べた大きな治験結果です。 このリポートを読み、以前のGIST悪性度予測のパラメターが変わり、腫瘍のゲノタイプ解析の重要さが明解に示されています。

長いリポートですが、主なイマテイニブ服用の経過結果の基本的な新情報を書き出しました。

1. Exon11の変異は、ほとんど全般的にイマテイニブ400mg服用で効果がよい。(例外は下に説明)

2. Exon9変異はExon11に比較して腫瘍発展は171%、死亡リスクは190%であった。Exon9変異の患者はイマテイニブ800mg服用でリスクが61%良くなった。

3. PDGFRA又はKIT変異の見つからないGISTはExon11に比較して腫瘍発展は108%、死亡リスクは76%だった。

ゲノム解析した377人のうち315人(83.6%) はKITの変異がみとめられた。そのうち
248 (65.8%) は exon 11,
58 (15.4%) は exon 9,
6 (1.6%) は exon 13
3 (0.8%) は exon 17 だった。

付着した Fig.1 は Exon11変異のコードン分布を示す。縦軸は件数(一人で複数変異は可能)、横軸はコードン番号(図は多少読みやすくと編集しました。殆どは deletion(欠失)、point mutation(塩基一つが変異)、insertion (余分のコードンの入り込み)、またはそれらの組み合わせであった。

殆どのExon11変異はExon11の出始め550から560番内に起こっていた 78人〈31.5%〉。

一番頻度が高かったのはWK557-558の欠失(私の変異)で26人(10.5%)だった(緑箱)。

長い15以上のコードンの欠失がExon11の後部に見つかったのが39人(10.3%)に見届けられた。

単純なExon11point mutationは29人(7.7%)に見届けられた。その内多かったのが V559D(9人) と L576P(8人)だった。 他に W557R(3人), V560D(4人), G565S(2人), W557G(1人), V559G(1人), K558N(1人)だった。

(コードン変異の読み方:数字はコードン番号。最初の文字は通常そのコードンのアミノ酸の略字。後の文字は変異で変わったアミノ酸の略字。 V559D は コードン559番の通常 V(valine )が D(aspartic acid)に変わった変異を示す。)

Exon11患者が248人とだんとつして多く、有意義な統計的解析が可能になった。変異したコードン場所によりイマテイニブ服用予後が悪いのは(悪性度の高い順):

1. コードン579番の変異または欠失(Fig.1 に赤箱で示した),次ぎに悪いのは

2. コードン562, 565, 566, 567番を含む変異または欠失(Fig.1 に紫箱で示した)

3. 15個以上に及ぶ欠失

4. 一般的に Exon11の後部(コードン番号の高い)の変異、そして577−579番の予後は良くない。

5. その他のExon11の変異は、Point Mutation, 欠失、挿入、そしてホモ/ヘミ変異に関わらずイマテイニブ服用予後は殆ど同じで他の変異に比べて一番良い。

(コメント:前に紹介した文献には私のWK557-558欠失は最悪の予後と出ていたが、イマテイニブ服用効果は単純な変異と同じように良いとの事。 参考にNCBIの染色体4、Exon11のコードン550から580までのゲノムシークエンスを付着しました。コードン番号を下に書き、3塩基を囲み見やすくしました。これで各コードンのアミノ酸、及び塩基が見られます。イマテイニブ服用予後が悪いコードンは赤、オレンジ、紫箱に染めました。)

Fig.5 はコードン579番、コードン565番と 他のExon11場所での変異の悪性度発展なしの生存を示す。(私見ですが、このレポートの題名にあるように治験加入者は案外 Advanced,進行したGIST患者が多かったのではと思っています。全ての患者の腫瘍はゲノム解析をされています。それ故グリベック服用後の悪性発展なしの生存は結構悪性へのバイアス傾向があるのでは感じています。)

過去のレポートに小腸、大腸など原発のGISTは予後が良くないと書かれていたが、このレポート一部にその理由はそれらの臓器にExon9のGISTの頻度が胃より高いからだと書かれていました。 (小腸、大腸原発の人等はゲノタイプ検出で確認すれば気が休むのではないでしょうか。また胃原発だからと楽観するのも危険。)

要約の最後に:我々は、腫瘍ゲノタイプがイマチニブでGIST治療される患者の無進行生存と全体的生存率を予測する一番大切な前兆のパラメターであると結論します。KITエクソン9変異体患者が一日800mg服用で最も薬の効果が得れる個人化された治療を勧めます − とあります。

他に、Exon9、PDGFAにも詳細が書かれていますが、また後でポストします。

[5653] 腸原発GIST予後はExon9に深い関係がある Sunny南加 - 2011/10/20(木) 10:41 -

小腸、大腸原発のGISTの予後は良くないと過去の文献でよく読みましたが、このレポート

KIT mutations and dose selection for imatinib in patients with advanced gastrointestinal stromal tumors
Maria Debiec-Rychter, et al. Eur J Cancer. 2006 May;42(8):1093-103、

によると、予後予測の第一因子は腫瘍ゲノムタイプだと。小腸原発は胃にくらべて予後が良くないのは Exon9の腫瘍の率が高いからだと説明されています。 このレポート Table 1 の一部を Excel にコッピーして、グラフ化し解かりやすくしました(付着1)。 

このレポートによると胃原発の80%近くがExon11です。これが統計的に胃原発のGISTの予後が良いと過去のレポートに書かれた理由でしょう。小腸原発のExon9が占める率は殆ど27%、胃原発の8.4倍です。 胃以外の原発臓器も案外高い比率でExon9変異が見つかっています。この裏は「私のは胃原発だから、大丈夫」はちょっと危険。 ゲノムタイプを確認し、個人化した治療を受けるべきだと思います。(日本の保険は400mg以上をカヴァーしないのは、この様な科学的な情報に適応でない時代遅れで、非常に残念だと思う。)

また Wild Type も12.1%から 17.5%と発生率が高い。ただ本文によると Wild Type は変異がないのではなく、変異が見つけられなかった、すなわちExon 11, 13, 9, 17, etc. の順にテストしてその他の変異を見届けられなかったと解釈しています。(時間と経費が掛かるからだと思う。)

PDGFRA、Exon13,Exon17も5%以下の頻度で臓器にあまり関係なく見つかっています。

この治験の大きな目的の一つは一日服用量400mgか800mg、どちらが効果が高いかを突き詰める事でした。 

この結果グラフを見る前にこの治験対象の患者全体を知る事が大切だと思い、それを示す患者の最初摘出腫瘍サイズを下にコッピーしました。
4cm以下は  78人(20.7%)、
4ー8cmは  124人(32.9%)、
8ー12cmは  90人(23.9%)、そして
12cm以上は 85人(22.6%)です。

下の全体的な生存率、悪性進行なしの患者の割合のグラフに対して、この治験加入者の腫瘍が案外大きくなってから摘出手術を受けた、進行した Advanced GIST患者が多い事を頭に入れておいてください。残念ながら、このレポートには腫瘍の有糸細胞分裂数(mitotic count)の統計は報告されていません。

イマテイニブ服用一日400mgに対し800mgの進行なしの生存率は Figure4で示されています。 A は全ての結果で、B はExon9 GISTの患者のグラフです。Exon9の一日イマテイニブ800mg服用の比較的良効果は明らかです。本文に書かれているように服用初期6ヶ月間に大差が出ています。 ですから、Exon9と結果がでれば、即イマテイニブ800mg服用が重要です。 

Figure 4C は Exon 11、そして Figure4Dは Wildtype 患者の経過をしめしています。 これらで見られるように、進行なしの生存はイマテイニブ服用400mg と 800mg では大差がありません。 後年になると特に Wildtype 400mg服用の方が生存率が良くなっています。 この治験では、400mg服用患者の腫瘍が悪化進展すると800mgに切り替える、いわゆる Cross Over が行なわれました。 それが理由か、その詳細の説明が見つけられませんでした。

故意に順序を変えましたが、Fig.2 は全体的な生存率を示しています。 Fig. 2A は全ての患者のOS−Overall Survival 全体的な生存率と悪性進行なしの患者の割合を示しています。このグラフによると、全体的にグリベック服用3年後、5年後に25%の患者さんは悪性進行なしの生存、そして彼等も含め全体の52%近くは生存された。

Fig. 2B は上から Exon11, Wildtype, Exon9の悪性進行なしの患者の割合を示し、Fig. 2C は同じ順序で全体的な生存率を示しています。これらは一日イマテイニブ400mgか800mgいずれかを服用後の結果です。これによると、イマテイニブ服用で65%の Exon 11,52%の Wildtype, そして 20%の Exon9の患者が3年、5年生存したと読み取れます。

この治験が終わったのが多分2005年でしょう。その後スーテントが第二線GIST治療薬と認定されていますから、とくに悪性進行が認められた時点でスーテントに切り替えていれば、特にExon9の患者さんの全体的な生存率は相当良くなるのではないでしょうか。

[5654] ワイルドタイプGIST Sunny南加 - 2011/10/21(金) 08:44 -

下は2011年08月07日にGnetにポストしたものをコッピーしました。

ーーーー

Wild Type GIST につき、詳しいレポートがLRG Newsletter 8月号に出されました。

掲示板やGnetでワイルドタイプの方は殆ど出てこないのですが、やはりゲノタイプをしている患者さんが少ないからでしょうか。
(Wild Type GIST とはゲノタイピングでKIT エクソン11、9、12、PDGFRA等に異常が見つからないが、どこに異常があるか確定できないGISTです。小児または20歳以下のGISTは殆どがワイルドタイプです。)

先月日系人3か4世母親(40歳ほど)のLRGポストがあり、メール交換をしています。彼女もワイルドタイプで、例外的だと落胆していました。早速オレゴン州のOHSUのGIST権威者にコンソルテーションに行くと聞きました。 彼女がLRGで私以外初めての日系人GIST患者です。

このレポートにGIST全体の10%近くがワイルドタイプと報告されています。結構比率が高いのに驚いています。
このレポートは下をクリックして5ページから見られます。
http://www.liferaftgroup.org/docs/newsletters/August2011n...

GISTの中でもワイルドタイプは稀だからでしょうか、アメリカの政府機関 National Institutes of Health (NIH) −国立健康局の医師グループが集中的に研究し治療もしています。このレポートの著者もその一人です。NIHでは1年一回、今年は6月15日から17日までクリニックを開き、80人の患者がアメリカ、カナダから参加したとの事。(世界中どこからでも参加できると記憶しています。)

全文翻訳は大変なので重要部分にしぼりました。

Wild Type GISTと診断された初期の患者平均年齢は26.6歳(5-58歳)でした。そして、現在治療している患者の平均年齢は34.3年で、平均治療期間は7.3年(0-36歳)です。

60パーセントのWild Type GIST患者は治療開始から5年以上生存し、その情報からカプラン・マイアー生存曲線を作った。 図1は5年間の、全体的生存率(OS - Overall Survival) と 再発のない生き残り (RFS – Refraction Free Survival) を示します。 5年後のRFSはわずか32%だが、同じ期間の全体的生存率OSは93%と全く高い。これは大多数の患者の腫瘍は怠惰で増殖度の低いことを示唆します。 小児患者(24% RFS、88% OS) と 成人wildtype患者(30% RFS, 93% OS) との間は殆ど変わらなかった。他のタイプのガンになった患者さんにとっては再発は良い予後を示唆しないが、Wild Type GIST患者は非常に著しく違い、長い生き残りができる。

KIT突然変異されたGIST では腫瘍サイズ、有糸分裂率、原発位置が予後因子と重要視されている。 しかしWild Type GIST患者にはこの様な関連が見つけられなかった。それ故、ワイルドタイプの治療には医師が補助療法の必要を決定するのに上記の危険因子を使わないこと我々は勧める。

我々の新しい研究はGISTのSDH (Succinate Dehydrogenase - 細胞内のミトコンドリアにあるエンザイム) の表現に集中した。 12%の wildtype GISTがSDH1サブユニットの1つに生殖細胞突然変異があることが判った。 より面白いことに、免疫組織化学によって評価して、70%のwildtype患者とすべての小児患者がSDHB (SDHの一種類でSDHB) にネガチブと出た事でした。 SDH 機能喪失が大多数の wildtype GIST患者の主要決定要素であることを強く示唆した。 これらの新しい調査結果から、これらのサブグループの区別を反映する小児および wildtype GISTの現在の定義の再審が必要だと考える。
ーーーー
コメント追加:まれなGISTの内その10%ほどのWildtype GISTはなお稀なので治療研究が遅れているようです。Wildtype GISTの日系人女性はOHSUの医師と会い、当分グリベック服用を勧められたとメールを受けました。

[5655] Sunny南加さん ありがとう 大雪 - 2011/10/21(金) 11:11 -

Sunny南加さん、たくさんの情報をありがとうございました。様々なタイプがあり、治験の結果についても大いに参考になりました。しかし、今の私には難しすぎてわからないところがたくさんあるので、これを元に勉強してみて、主治医と話が出来そうだと思えたら挑戦したいと思います。
ご厚意に感謝します。ありがとうございました。




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