飛ぶことができなくなった鳥は地に伏して 泳ぐことができなくなった魚は海上へと浮き上がる 社会で迷った人はどうなるのだろう
空がなかったら鳥はきっと鳥じゃない 海がなかったら魚はきっと魚じゃない 社会がなくても人はきっと人でいられる 鳥には空が 魚には海が 人にはいつのまにか社会が用意されている
例え飛びたくないとしても 例え泳ぎたくないとしても 例え騙したくないとしても 鳥は鳥を 魚は魚を 人は人を 描いてゆく 終わりを知りながら始めを創り 心と体を切り離すことを夢に見て 空があるから空を飛び 海があるから海で泳ぎ 他人がいるから人は育つ
すべては用意されている 後は信号の色が変わるのを待っていればいい いずれ目的地に着くだろう 社会はその経路を地図にして 人は地図を見てややこしく目的地にむかうんだ 唯進めば着くはずなのに ややこしい地図を渡されて 誰かは迷い立ち止まる 空を見あげれば鳥は自由に飛んでいて 海を見れば魚がぴょんと飛び跳ねた 土すらもない場所で地図を燃やす火を探す
地に伏す鳥 海上に浮かぶ魚 迷いの果てに目的地の到着を諦めた誰か 地図を燃やした誰かは 自然な終わりも描けない |