[225] The new moon which dreams. |
- 鬼神 黒帝 - 2005年09月04日 (日) 23時10分
『星がいっぱい見えて綺麗だね。』
そんな言葉が、頭にふっと、響いた。 いつだっただろう。何気無い、その言葉。 冬の夜は寒くて、凍えそうな中で。 無色の夜空に、暖かいその声は響いていた。
『田舎だからね。空気が綺麗なのかもね。』
そんな、くだらない言葉を、返した自分がいた記憶が在る。 本当は夜空なんて、見て無かった記憶も在る。 その人だけを、見ていて。暖かい未来を、眺めていて。 幸せとは言え無かった時間。 けれど、何よりも幸せだった時間。 星と、月と。綺麗に輝いてた時間。
『俺は月だから。君は、月飼いなんだね。』
小さい声は、君には届か無かったみたいで。 けれど、君は、幸せそうに笑ったんだ。 いつまでも見つめていたい、いっぱいの笑顔で。
時間は、止まら無くて。 君は、朝を迎える星の様に、すっと、消えて。 残された部屋の君の匂いが、ふと、月の涙に変わって。
やがて、慌しい時間の流れがやって来て。 満月だった月は、少しづつ、見え無くなっていった。 噎せ返る様な、暑い夜に、新月の時はやってきて。 そして、今もまだ、きっと、新月の時間は続いている。 君は、月が見え無くなってしまった。 真っ暗な夜に、真っ暗な月は、見え無くて。
今もまだ、その時間は続いている。 月からも、星は見え無くて。光が一つも無い、独つの夜。 真っ暗な、独つの夜。
けれど、月は眺めている。 まだ、そこに在る未来を眺めている。 今は、新月の時間。 けれど、やがてやって来る満月の時間を、信じて待っているから。 きっと、永久に欠ける事の無い、満月の時間はやって来る。
新月の時間は、月は見え無いけれど。 だけど、月はそこに在る。 良く目を凝らして、見てみたら。 はっきりと見える、丸い、大きな月。 いつか、星に照らされるのを待ってる月。 光を信じてる月。 壊れる事無く、光の当たる場所へ、少しづつ、進む月。 いつか、言ってあげたい。 月が、星と出逢ったその時は。 『−キレイダヨ−』
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